2012年11月7日水曜日

ナンチャッテ評論ー石山浩達〈AlienVision〉についてー

本日は自分の作品についてではなく、兄の浩達(ヒロミチ)の作品について、語らせて頂きます。


                                                                                                                                   
〈AlienVision〉というメインコンセプトで絵画・立体など様々なスタイルで作品制作をする兄の浩達。自明の事実として、それは彼が作り出した視点ではありますが、作品に私的な感情が感じられないというのが、かなり不思議で面白いです。

2012年現在、〈 AlienVision〉は三つの絵画シリーズと 、立体シリーズを合わせて、4つのセクションによって構成されています。表現方法がシリーズによって異なるというのが大きな特徴。 特に、絵画の〈AlienVision:Light〉のシリーズは、まるで別の人格や生物が遠くから俯瞰しているという感じすらするほど技巧的で超クールです。



AlienVision:Lightより《AlienVision4:渦動》 

AlienVisionDarknessより《赤い星》 


AlienVision:Metamorphoseより《AlienVision5:Metamorphose》 


AlienVision:Eternalより《永遠の個》 


「技巧的で超クール」だというのは、〈AlienVision〉において、彼が自らの筆跡や造形感覚を消しているという事ではありません。例えば、隅から隅まで精密に細部を描き切るのが彼のLightシリーズの特徴であり、その独自のテクニック(板、白亜地、油彩、古典技法+オリジナル)を駆使しながら、これでもかと言わんばかりに、独創的で濃密な世界を描いています。それは、独自の手法やセンスで制作していながら、作品に痕跡として残ってしまうであろう〈感情を帯びた視点〉の行方が不明だという事です。

 
私がここで言う〈感情を帯びた視点〉とは、創作という過程のなかで発生する作り手の視点を連想させる痕跡、作者の熱やオーラと言った、言葉に表しにくい、あるいは実証不能な作者独自の雰囲気を纏ったものを指します。

作り手にとって、創作に〈感情を帯びた視点〉が介入してしまうのは、おそらくノーマルな反応だと思いますが、それとは対照的な反応をしていると感じる兄の頭の中は、今でもさっぱり解りません。

 


兄・浩達は〈AlienVision〉のシリーズを制作する以前、幼少期より、極めて私的な視点が介入していると思われる作品を幾つも描いてきました。昆虫や恐竜、憧れのヒーローから描く対象は次第にオリジナルなものに変化していきました。ほうきに股がる友人を魔法使いにしたり、唇が特徴的だったボクシング少年をボクサーに見立ててキャラクター化し、それらのキャラが登場する物語を作ったりしていました。他にも、時計を叩いているおじさんを描いたり・・・・・・。様々な人と出会い、何かを吸収していくなかで自我に目覚め、対象が変化していくというプロセスはごくごく人間的なモノだと思います。

高校時代の油彩画は今より厚塗りで、特に、握りこぶしを描いた《わきあがる意志》は、タッチも強く、ギラギラとした力強さを放っているように思いました。以前の兄が描く絵には、身近な題材が用いられていたならば、そこには必ず人間的な何かが介入していたと思います。

 
《わきあがる意志》H111.6xW91cm (石山浩達が高校2年(16歳)の時に描いた作品)



穏やかな笑顔を見せたり、家族と良く喋ったり、時にムスっとしてみたりする兄とは違って、Alien Vision のシリーズには私が〈お兄ちゃん〉に抱き続けている人間的な雰囲気がありません。雰囲気と言うと抽象的に聴こえるかもしれませんが、これは文体では伝えきれないほど、誰よりも兄を強く感じながら、家族として彼と密に関わり、地球を超えて宇宙上の誰よりも彼と遊んできたであろう人間が言う、実感と記憶を帯びたリアリティある眼差しだと思います。

繰り返しになりますが、〈感情を帯びた視点〉の介入を拒み、創造によって架空の世界を造り上げていくという事に、 石山浩達 〈Alien Vision〉の魅力を感じています。どちらが良いとか悪いではないかもしれませんが、もろに〈感情を帯びた視点〉が自然に介入してしまう私には絶対に出来ない事です。

「尊敬はしても憧れはしない。憧れはしなくても尊敬はする」というのが私の基本モットーではありますが、彼に対しては例外的に限りなく憧れに近い感情があります。
 
下の絵画は、2010年に彼が大学卒業制作で作った《Lightning》。
H227.3×W181.8㎝

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